斎藤知事のことをよく存じ上げないんだけど、政治家としてすごいなと思ったのは、
全会一致で不信任決議を突きつけられた後、これは知事のご性格なのか戦略なのか、
そもそも意外と人格者なのかわかりませんが、不信任決議を突きつけた県議の悪口を
一切言わなかったですよね。斎藤さんは自分の主張は言ったんだけど、周りに対して恨み言みたいなことは言わず、
終始冷静に戦っておられたと。
これがあったからもしかしたら勝ったのかなと思うんですけど、これも政治家として
なかなか勉強になりました。
私がもし群馬県で不信任決議案を突きつけられたとして、県議会を大事にしようと
思ってるし、ないと思ってますが、じゃあ不信任決議が通ったと。そしたら私は必ず同日に解散しますよ。
そして多分首謀者を徹底的に攻撃しますよ。
負けた後も多分生涯攻撃しますよ。こういう性格の人間だったら、もしかしたら通らなかったのかもしれないなということで、
そういう意味でいうと、斎藤知事に会ったことないんですけども、これだけの批判に耐えて、
特にそれについて誰か特定の人物の悪口を言うこともなく、選挙戦に臨んだということは、
やっぱり本当に勉強になりました。ある意味、政治家としてはそこは大したもんだなという風に思いました。
ただ、選挙研究家としては冷静に見なきゃいけないので、得票率は多分45%ぐらいですよね。
時点の稲村さんは39.6~7%だから4割ですよね。得票率って選挙ですごく大事なので、斎藤知事が再選された、民意を得たということなんだけど、
半分以上の人はNOと言ったということは、多分きっとご本人も受け止めざるを得ないと思うし、
これからの県議会とどういう風にお付き合いをされていくのかというのは、同じ知事として
非常に関心があるところです。こういう状況の中で県議会とどんな関係を築いていくのか。これだけの逆境を乗り越えたのだから、ぜひまた再スタートして頑張っていただきたい
という思いはあります。
同じく事実という意味で言えば、この逆境を乗り越えて、もちろんネットの力、
ある意味でいうと今回、既存のメディアではないネットの影響力というものを
すごく世に知らしめたと。いわゆる「ネット民」みたいな言葉もあるんですけど、それは若手だけじゃなくて、
今回は多分ね、50代とか60代の人もネットの影響を受けてますから、
これは国民もその中に入ってるんだと思います。
そういう中で、選挙のあり方みたいなものも本当に考えさせられました。これから選挙を戦うということになると、一応5回選挙を戦って全部勝ったと。
どっちかというと斬新な選挙戦略をやる人物だとずっと思われてたんですけども、
私が勝った5回の選挙なんて、何の参考にもなんないなと思います。ネットも駆使していかないと、やっぱり自分の想いというのは届かないということを
よく頭に置いてやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。
それから、長くなるけどもう1つだけ言わせていただきたい。
今回、斎藤知事の行動・発言がパワハラかどうかということが問題になりましたよね。一連の県議会とのせめぎ合いの中で、県政の中で亡くなられた方がいたと。
これは本当にお気の毒だと思うし、心からお悔やみを申し上げたいと思う。
やっぱり人が亡くなられたというのは、すごく大きなことだと思うんですね。ただそのことはそのこととして、斎藤知事にパワハラがあったのかということについては、
結局最後までね、決定的な証拠が出てこなかったじゃないですか。
こうして28年も政治家やってて思うんだけど、本当にパワハラをやってたんだったら、
絶対に録音とか残ってるんですよね。それは録音も一切出てこなかったですよね。それからさっき報道を見ていたら、結局、百条委員会の委員長が言ってたのは、
6人か7人か8人かんないけど、証人として招いた県職員の方々がいるわけじゃないですか。そしたら委員長の感覚だけど、斎藤知事から明確なパワハラを受けたという証拠や
そういった発言は結局なかったと思う、というようなことを言ってるわけですよね。
じゃあ今までのことは何だったのか?
こうやって世の中で生きてて、誰からも評判のいい人なんていないですよ。
それは記者の間だってそうだし、政治家でもそうだし、経済人もそうだし、
誰からも評判のいい人なんていないわけじゃないですか。自分も欠点だらけの人間だけど、やっぱりパワハラ・セクハラ、こういうことしちゃいけない
と思いながら、県の職員にも常にそのことを言ってるんで、それは大事だと思うんですけど、
誰かを「この人はパワハラをした」みたいに言うときは、ちゃんと証拠がないといけないと思う。だってこのまま斎藤知事が選挙に負けてたら、生涯パワハラをした人ということになったじゃないですか。
もう一回言いますけど、百条委員会が呼んだ職員の方々から、明確なパワハラの話は
結局なかったと委員長が言ってるわけでしょ。じゃあ何だったのかと。それから次々にワイドショーとか週刊誌から出てくる斎藤知事の所業みたいなね、
おねだり知事みたいな話で、行き過ぎのところはあったかもしれないけど、これって
知事としての不信任に値することなのかという感触も、今思えばあって。そういう意味でいうと私も、いわゆる既存のメディアの報道にすごく影響を受けてたという
ところがあるかなというのは反省してて。
私はテレビや新聞を信じないわけじゃないけど、でもやっぱりそうじゃない新しい情報とか、
それは玉石混交でフェイクもあるかもしれないけど、知事として政治家としてしっかり情報を、
全体を見ながら判断していかなきゃいけないんじゃないかなとすごく思いました。今度の兵庫県知事選挙は、知事として学んだことはものすごくありますので、
それはこれからの県政にも、あるいは政治家としての歩みにも、それから次の選挙にも
活かしていきたいと思います。
(山本一太)