なぜ前田敦子がセンターだったのか

AKB48は、本当にエリートじゃない。
映画『がんばれ!ベアーズ』みたいな落ちこぼれ集団なんですよ。

高橋みなみは、ホリプロタレントスカウトキャラバンを受けて落ちた。
前田敦子も、お母さんの背中に隠れちゃうような人見知りだった。

そういうダメダメな子たちが集まってオーディションをやり、翌週からリハーサルを始めました。
少年野球の子供たちを集めて「グローブをつけてみろ」と言ったら、左右反対にはめるやつがいるような、
そんなチームでスタートしたんです。

僕はプロデューサーとして前田敦子をセンターにしましたが、もしかしたらファンの総意は大島優子だったかもしれない。

どちらが優れているということではなく、期せずして、だいたいツートップになっていくんです。
互いに全然違うタイプの2人が組み合わされて、相乗効果が生まれる。

前田敦子は人見知りな子で、不器用で、すごくストイックで、やりたくないのにセンターをやらされた。
子役出身の大島優子は、愛想も人当たりもいい子で、仕事や人付き合いの重要さをよく心得ている。
この2人が競っていくわけです。

(前田をセンターにしたのは) センターにいちばん向いてないな、と思ったからです。

ファンはアイドルに「シンデレラ・ストーリー」を求めているんです。
いじめられたり、ぼろを着て雑巾がけをさせられたりして不遇だった女の子が、
お姫様として大成功する物語をね。

AKBは、はじめはこんなにダメだったけど、やっと自分の応援でここまできた。
それをファンは体験したい。
だったら最初からすごい美人やお姫様ではダメじゃないですか。

それであるとき、何も分からない無垢な14歳の前田敦子
「君がAKB48のセンターで歌うんだよ」と言ったら、
彼女は大声を上げて泣きながら「嫌だ」と言った。

ほかの子たちはみんなセンターになりたいし、ソロ曲がほしいんです。
僕のプロデュースで、その子がセンターに立つかソロデビューして“にんまり”しちゃうと、
そこからはもうドラマが生まれないんです。

だから前田敦子しかいない、というのがありました。

秋元康