攻略情報などは全て見ずにプレイした結果、18日目でプレイする手を止めてしまった。

最初は特に難しいことはなく、仲間は三人で「アスリート」「料理人」「収集家」の特徴を持っていた。
一週間程は周囲の廃墟を探索しつつベッドや調理器具、暖炉、工具作成台などの用意に追われた。作成自体は簡単だった。
廃墟に必要な素材が一通り揃っていたのが良かった。
食料や水もあったし暫くは安泰だった。
余裕があったので時折家を訪ねてくる住人にも快く手を貸した。
どうにも娘と二人暮らしの女性で略奪を恐れているらしい。
夫は軍に連れていかれ不安だとのこと。窓をバリケードで塞ぎ、一晩守ってほしいと言われ、アスリートの彼を貸し出した。
問題が起きたのは十日目を目前にした九日目だった。
襲撃がいつ来るか分からなかったので毎日交代で見張りを立てていた。しかしその日アスリートの仲間は住人の下で寝ずの番、
そして残った二人のうち一人は探索で、もう一人は疲労状態だった。
まぁ今日一日位なら寝てしまっても大丈夫だろうと思ったのが悪かった。その日運悪く賊が入り込み、食料を略奪された。
家に残った料理人は軽い怪我で済んだが、食べ物が無くなってしまったのだ。
私はベッドに疲労状態の二人を寝かせると、
次の日の探索で普段足を運ばない場所に向かった。
病気の父と彼を看病している息子がいるというガレージだ。害意を持って探索に向かったのは初めてだった。
手にはバールをもって進んだ。扉から向こう側を覗き込むと息子と思わしき青年が背を向けて立っていた。
マップで食料を取れそうな場所――それも比較的安全に――はここだけだった。
扉を開けて飛び出し、青年を後ろから殴りつけた。
HPバーと思われる青いゲージが半分ほど減少した。
戦うのは初めてだったので一撃で倒せると思っていた。
結果少しばかり狼狽した。青年は頭を押さえながら拳銃を突き付けてきた。
発砲され操作していた収集家のHPが一気に半分ほど吹き飛んだ。
私は何度も青年に殴りかかるよう命令した。
結果青年と近距離で殴り、殴られ、辛うじて生き永らえた。
ゲージはもう左少し分しか残っていなかった。青年の懐を漁っていると「何かあったのか?」と言いながら老人がやって来た。
私は一も二もなく老人を撲殺した。結局その家で食料を大量に入手し帰還したが、何とも言えない後味の悪さが残った。
帰還後、食料は手に入ったが収集家の彼は危篤状態だった。
包帯を巻いてベッドに寝かせたが、何日経っても治る兆しはない。全員に「悲しい」のバッドステータスが付与され、料理人の彼は煙草が欲しいと言い出した。
挙句の果てにはうつ状態になり、風邪に罹ってベッドに寝た切りになった。唯一無事なのはアスリートの彼だけ。
彼を使って二人を元気づけ、薬品と煙草を作れる台を作成した。しかし材料が圧倒的に足りていない。
薬品も底をつきそうだ。夜の探索はアスリートの彼を駆り出し、バリケードで家を補強しながら
料理人の彼に鞭打って時折夜番を任せた。
食料はあったが、収集家の彼は危篤と重傷を行ったり来たりしていて動かせそうにない。
料理人の彼は体調不良を脱しきれず、時折鬱になってしまう。満足に動かせるアスリートの彼は忙しい。
兎に角昼は二人を元気づけ、夜に備えて必要なものをクラフトし、僅かな時間でも眠りにつく。
疲労が抜けきらなくても夜の収集は必要だった。
そして来たる十八日目。
とうとう粗方の場所は収集し尽くした。
残っているのは「危険あり」のマップだけ。あの親子を撲殺して以降、私は誰かを害すような真似はしていなかった。
しかしそうも言っていられない状況にある。今満足に動けるのはアスリートの彼だけなのだ。
どうにか薬品を見つける必要があった。私は覚悟を決めてスーパーマーケットに向かった。
そこには軍が駐留していると書いてあった。戦うつもりはない。
彼らの目を盗んで必要なものだけ収集すればいいと考えた。
目論見通り、素材だけなら入り口付近に幾つかあった。
けれど今欲しいのは薬品と食料だ。アスリートの彼をもう少し奥の方に移動させ、扉を覗き込んだ。
すると話し声が画面に表示された。扉の向こう側に立っていたのは一人の軍人と若い女性だ。
そこには記載するのも憚られる様な会話があった。簡潔に言えば、女性は食料を欲していて、軍人は体を売るように強制していた。
何となく不穏な気配を感じていると、軍人が女性を銃床で殴りつけた。
私は武器を持っていなかった。
少しでも多くの食料と薬品を持ち帰るために持ち込んでいなかったのだ。
それでもただ見ているわけにもいかず、アスリートの彼を飛び出させた。しかし、あまりにも無謀が過ぎた。対峙する軍人はライフルを持っていて、
何か一言、二言をアスリートの彼に向かって叫ぶと無慈悲に発砲した。
体力ゲージはものの一秒足らずで吹き飛んだ。アスリートの彼が地面に倒れ伏した。
死亡したのだ。
暫く経った後画面が暗転し、家に戻った。
アスリートの彼が死亡したことだけが知らされ、
ベッドに横たわる料理人と収集家だけが残された。彼らに待っているのは緩やかな死だ。
私はここで一度ゲームを落とした。

たかが2時間足らずだったが強烈な体験だった。
私の突発的ともいえる正義感によって結果的に三人、死なせる形となった。この気持ちを言い表すのは難しい。
少なくともゲームをクリアしたときに感じる爽快感や達成感はない。また失敗して「もう一度!」というような意気込みもない。
後悔や暗鬱とした気分とも少し違う。どこまでもイノセントで、やるせない感覚が燻っているような感じだ。
このゲームには他のゲームにはないものがある。それは確かだ。
他人に進んで勧める類のゲームではないと私個人は感じた。
けれど買うかどうか迷っているのなら一度手に取ってみるのはアリだろう。ただプレイ後に味わう感情は、爽快感や達成感とは違う何かとだけは知っていて欲しい。
(TOKUSAN)