幸せになるために

「怒らないで聞いて下さい。
 私、由記乃さんと結婚を前提にしたお付き合いとか、そういうつもりで来てないんです。
 由記乃さんのせいじゃないんです・・・私の、勝手な都合なんです」

『すいません、いや・・・良かったです。私もなんです。
 お付き合いとか、そういうこと考えてないんです。すいません』

「いや、こちらこそ・・・お互い様だったんですね」

『私、今のままがいいんです。
 家族と暮らしていて、幸せなんです。

 仕事は掃除の仕事をしています。大した仕事じゃありません。
 でも、お客さんから感謝されることがあるんです。綺麗にしてくれてありがとうって。
 仕事ですから、当たり前のことをしてるんですけど、それだけで嬉しいんです。

 今の生活も、平凡だけど幸せなんです。
 今の生活を失いたくないんです。
 今のまんまがいいんです』

「いいじゃないですか」

『私、普段自分のことそんなに話さないんですけど・・・
 斉藤さんは聞き上手なんですかね』

「そんなわけないじゃないですか・・・
 じゃあ、ちょっとだけ、私の話も聞いてもらってもいいですか?」

『はい、ぜひ』

「実は、ゲイなんです」

『そうなんですか』

「そうなんです」

「でも、由記乃さんにも好きな人とかいるんですよね?」

『うーん・・・傷つけたり、傷ついたり、ちょっと苦手だなって。
 幸せになるためには、傷つかなきゃいけないんですかね?』

「そんなことない。
 ・・・って、思いたいですね」

(私を判ってくれない)