非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー(1892年4月12日 - 1973年4月13日)は、アメリカ合衆国の作家、画家、芸術家、掃除夫。
非現実の王国で』の作者。

誰に見せることもなく半世紀以上もの間、たった一人で1万5000ページもの作品を描き続けた。
死後、アウトサイダー・アートの代表的な作家として評価されるようになった。 

大家ネイサン・ラーナーに持ち物の処分を問われた時、ダーガーは「捨ててくれ」と答えたとされる。

トラック二台分のゴミを捨てた後、ネイサンはダーガーの旅行鞄の中から奇妙なものを発見した。
花模様の表紙に金色の文字で『非現実の王国で』と題名が記された、原稿15冊だった。

全てタイプライターで清書され、7冊は製本済み、8冊は未製本だった。
さらに物語を図解する絵を綴じた巨大画集が3冊あった。
数百枚の絵には3メートルを超える長いものもあり、粗悪な紙の面と裏、両面に描かれていた。
ヘンリー・ダーガーの秘密のライフワークだった。

「ダーガーが、はからずも成し遂げてしまった偉業(異業というべきか)を看過することもできない。
人が生きて表現することをアートと呼ぶなら、アメリカ社会の底辺で雑役夫として生涯を終えた男が、
アートの先端どころか、前人未到の域、アートの「最果て」に到達してしまったのだ」

「豊かさの基準が一定で、お金がないだけで虐げたれてしまう世界で埋め尽くされていると思われている今、
ヘンリー・ダーガーアウトサイダー・アートというよりもアートの語源そのものである『生きのびるための技術』
を示しているというように思う」

(小出由紀子)

ヘンリー・ダーガーは、物語を書いたのではなく、もうひとつの世界をせっせと紡いでいたのである」

坂口恭平