私も女性と暮らしていた。夫婦同然で。
やはり子供ができた。ずっと昔の話だ。朝起きて、出かける準備をしていた。
いつものようにーーー だが、頭の中に妊娠があった。
その時、生まれて初めて怖いと思った。
こう思った。
こんな世界に、子供を?
こんなひどい世の中に産むのかって。それで彼女に「よそう」と。
それから数週間、彼女を説得した。
今考えてみても、正直言って、あの決断は間違ってはいなかった。
だが、1日として、違う決断をしていればと思わない日はない。もし子供を産まないつもりなら、妊娠は内緒にしろ。
だが、子供を産むのならーーー 精一杯、甘やかして育ててやれ。私が話せるのはそんなところだ。
(ウィリアム・サマセット)