勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

予曰く、勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
問ふ、 如何なれば不思議の勝ちと云う。
曰く、 道に遵い術を守るときは其の心必ずしも勇ならざると雖ども勝ちを得。
是れ心を顧みるときは則ち不思議とす、故に曰ふ。
又た問ふ、 如何なれば不思議の負けなしと云ふ。
曰く、 道に背き術に違う、然るときは其の負け疑ひ無し、故に云爾(しかいう)。
客乃ち伏す。

松浦静山

 

(要約)
負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に何か負ける要素がある。
勝ったときでも、何か負けに繋がる要素があった場合がある。
試合に勝つためには、負ける要素が何だったか、どうしたらその要素を消せるかを考えて行く必要がある。
また、もし勝ち試合であっても、その中には負けに繋がることを犯している可能性があり、
その場合はたとえ試合に勝ったからといって、その犯したことを看過してはならない。