サイバーパンク2077

自分は”お育ち”が悪く、転じて全米のローカルニュースの犯罪報道を見る悪趣味があり、
転じて治安の悪さが生々しいゲームが好きなのだが、サイバーパンク2077は「治安の悪さ」が
たいへんに地に足付いていると思う。

「地に足ついている」というのは、「作中の特別な設定のみに依存せず、現実の知識にも
十分に典拠することで厚さを出している」ということ。
開発陣には自分と似たような趣味を持った上位互換の人々がたくさんいるのだろう。

このゲームで悪事をなす人々は、一種の病理とも呼べるような、加害者のロジックを持っている。
それがまたどこかで見たような話であり、人間が強圧社会で摩耗していくリアリティとして
共感と納得できるもので、作中の息苦しさや生きていくことの難しさへの説得力となっている。

とくに「サイバーサイコ」周りの設定は見事というしかない。
生まれた場所が悪かった、社会が悪かった、運が悪かった、そういった小さな不幸が、
人々の中に取り返しがつかなくなるまで溜まっていくのが舞台となるナイトシティなのだ。

怒りや絶望、なにより孤独がコップの中に一滴ずつ溜まっていき、最後の一滴が引き金となって
コップから溢れ出す。覆水盆に返らずとはまさにこのこと。

この街で、人生が手に負えなくなった人は狂う。
プレイヤーには誰かが狂うまで滴り続けた一滴の内訳はわからないが、コップから汚水が
あふれるまでのカウントダウンを様々な状況から目撃することになる。

誰もがある面では被害者であり、その裏面では加害者である。
現実では静かに朽ちていくことを選べるかもしれない、だがナイトシティにおいては
過剰な人体改造がそれを許さず、狂気に暴力という実行力を持たせてしまう。

そしてこのゲームは、そんなふうにおかしくなった誰かを、プレイヤーが裁かずにいることを
許してくれない。

ナイトシティは行き止まりの街だ。
2077年に、太平洋とソノラ砂漠という地理の谷間に空いた、巨大な割れ窓理論だ。

小さな悪意がより大きな悪意を招き、渦に閉じ込められて誰もそこから抜け出せない。
アニメから入った身としては本当にプレイしてよかったと思う。

「女はこのままでいてと願い、男はこのままじゃダメだと焦る」

海と荒野に閉じ込められて、この街ではそんな小さなすれ違いが破局に至るのが日常になってしまった。
私達をそう説き伏せるゲームである。

(melmeki)