個人プレーには限界がある

ぼくは、歌舞伎町でホストクラブの経営をしています。

経営を任されるようになってから8年。
いま、ぼくのグループには「1億円プレイヤー」が6名います。
1億円というのは、1年の売上の総額です。
なかには6年連続で1億円を達成したホストもいます。

ホストの世界でも、年間1億円というのはなかなか達成できる数字ではありません。
達成できたとしても、それを長続きさせることは難しい。
そもそも、月の売上0円〜数万円レベルでもがいている人がホスト全体の4割ほどもいるのです。

結論から言えば、それは「チームプレー」を大切にするということです。

ホストクラブというと「個人プレー」というイメージがあるかもしれません。
それぞれのホストがお客さまを取り合って、しのぎを削る世界――。
そんなイメージがあるのではないでしょうか。

しかし、個人プレーには限界があるのです。

売上で言えば「月300万円」でしょう。

もちろん、個人プレーであっても瞬発的に1千万円に到達する人はいますが、
それが長続きすることはほぼありません。

よって、ぼくらの会社では「個人プレー」に走らないよう教育しています。
「チームで成果を出す」ことを最優先に考えているのです。

一人でやる限界は300万円でも、スタッフどうしの関係がうまく構築されていると「がんばろう!」と思えます。
「あいつも助けてくれてるし、自分も助けてあげよう!」となる。
いい関係になっていると、売上は上がります。

そういう「チームでの売り方」をしていくと、気づけばひとりあたり月1千万に到達しています。

チームプレーを大切にするために、うちの店では、ホストを「売上の数字」だけで評価しません。
「従業員からの評価」も入れているのです。

掃除の姿勢、練習の様子など、日々のがんばりも評価する。
それらすべてを評価しているので個人プレーには走りにくい文化ができているのです。

ホストクラブというと「優秀なホストを引き抜いてくる」というイメージがあるかもしれません。
実際に、歌舞伎町では「引き抜き合戦」が起きています。
しかし、ぼくのお店では引き抜くことも、逆に引き抜かれることもほとんどありません。

なぜ、引き抜きをしないのか?
それはそのほうがうまくいくから。
平たく言えば「儲かるから」です。

力のあるホストが入ると目先の数字は上がります。

ただ一方で、お店の人間関係、チームワークはやっぱりおかしくなってしまう。
嫉妬が生まれたり、足の引っ張り合いにもなる。
その不穏な空気はお客さまも感じるのです。

引き抜きで一瞬は数字になる場面もあるけれど、長い目で見ると
スタッフどうし仲がいいお店のほうが安定的に数字は上がっていきます。

「個人が強い」というお店ほど実は弱い、というのがぼくの考えです。

ぼくらの勝ち方は、ぼくらと仕事した人も巻き込んで勝つことができます。

個人プレーのカリスマホストは「一人勝ち」はするかもしれませんが、
彼についていった人が彼になれるかというと、なれない。

ホストのイメージは「個人」で競争し合うものかもしれません。
でも、それでは勝てないのです。
厳密に言えば、勝ち続けられないのです。

ホストクラブという場所であっても「チームプレー」が大切です。
ぼくのお店から続々と「1億円プレイヤー」が誕生するのは、
ただの偶然ではないのです。

(一条ヒカル)