ZEN大学のコンセプトっていうのは、学部が一つしかないということで、
その一つの中で、理系も文系も全部一緒くたにして学ぶような、
そういった学生を輩出していこうっていう。
オンライン大学っていうのを世の中的には多分求められているんだけれども、
今の放送大学とかって8割ぐらいは社会人なんですよね。だから普通に高校生が進学するオンライン大学が、今のところ日本にはほとんど無い。
大きいところがない。だからそれを作ろうというのがZEN大学です。
リアルの授業はね、本当は作りたかったんですけども、実はこれ都合で作れなくて。
N高ってスクーリング(登校日)を年1回やるんですよ、これ結構大変でコストも高いんですけども、
これは僕はすごく重要だと思っていて。
年1回ぐらいリアルで顔を合わせるのは、必要だと思ってます。ほんとはZEN大学もそれをやりたかったんですけど、それを日本の制度の中でやると
学校の校舎とか、必要とされる面積で、200億円ぐらいかかるんですよね。
それだけのために構えなきゃいけない。なので、完全にオンラインでいくことにした。
(N高での実績・経験がZEN大学でも生きてくると思うが、やってみてどんな知見が得られたか、何が見えてきたのか)
元々教育事業者ではなかったので、(N高の運営を)やってみて思ったのは、
今の大学受験制度っていうのが、相当な歪みを教育にもたらしているというところですよね。多分皆さんも、受験勉強を知ってるつもりじゃないですか、経験したつもりだと思うんですけれども、
やっぱり今やっている受験戦争って、僕らが経験したものより全然悪化していて。
今は小学校からSAPIXに通ってないと一流大学には入れない。
これやっぱりちょっとおかしいですよね。ただの選別だけですよ?
優秀な子を選ぶためだけのスクリーニングに10年以上もかけるって、おかしいですよね。(ZEN大学の選考というのは?)
事実上、ない。
N高生を全員ZEN大学に行かせようってことはまったく思っていなくて、むしろ思っているのは、
N高のことをかなり特殊な生徒だと思われるかもしれないけど、それはある意味正しいんだけど、
そうじゃなくて僕はこれは、本来あるべき高校生だと思っているんですよ。受験勉強をして大学に入るっていう今の制度そのものが、膨大な頭の悪い子たちを生み出している。
教育が歪んでいる。企業も、本当に求めてるのは「生み出している生徒」というのが多いはずです。
リアルがなくなるっていうことは、当面ないです。
当面ないわけだから、リアルのコミュニケーション能力が重要なのはそのとおりです。でも、今、デジタルのコミュニケーションだって重要でしょ?
むしろそっちの方が重要かもしれないのに、リアルがないからって一方的に責めるのは
それはおかしいでしょっていう。だから少なくとも、デジタルのコミュニケーションはぶっちゃけ、N高生のほうが得意ですよ。
リアルの部分が弱いっていうのは、確かにおっしゃるとおりなんですよ。
僕らは、リアルを補強するために何をやっているかっていったら、例えばZoomとかでも
一応画面越しの対面はできますよね?
それで僕らはね、面接練習とかやってるんですよ。実際にN高生の中には対人恐怖症みたいな人がいて、バイトの面接に落ちるっていう子がいるんですよ。
バイトの面接に落ちるっていうのはね、たぶん2秒で落ちてるんですよ。
第一印象で落ちてる。僕らは、面接のカリキュラムを作り続けている専任チームがいて、できるだけ半強制に近い形で、
全員にそれを受けさせてるんですよ。最低限のコミュニケーション能力を養うのもそうだし、入試の面接のトレーニングもやってるんですよ。
進学校ではやってるかもしれないけど、ほとんどの高校ではやってないと思う。だからある種、訓練された部分に関しては、N高生の方がリアルのコミュニケーションでも上の可能性がある。
(子どもたちのために何かしたいというのが動機だったりするんですか?)
多少はあるんだと思うんですけど、基本そういうのでやるのは僕は不健全だと思っていて。
そういうことを言うのは、むしろ不健全だと思っている。情が入ると、冷静な判断ができないので。
だから僕はそこからは距離を置くようにしているんですよね。(エピソードを聞いたことがあります。N高を作ってくれてありがとうと眼の前で涙を流されたのを見て、
そうなるとむしろ情が移っちゃうからと)もう会うのはやめようと。
(川上量生)