仁に過ぐれば弱くなる。
義に過ぐれば固くなる。
礼に過ぐれば諂(へつらい)となる。
智に過ぐれば嘘を吐く。
信に過ぐれば損をする。
人のためを思う気持ちが強すぎると自分が弱くなる。
正しくあろうとする気持ちが強すぎると考えが固くなる。
人を尊重しようとする気持ちが強すぎると媚びになる。
利口なだけでは嘘吐きになる。
人を信じるばかりではだまされて損をする。
氣長く心穏かにして、萬(よろず)に儉約を用いて金銭を備ふべし。
儉約の仕方は不自由を忍ぶにあり。
此の世に客に來たと思へば何の苦もなし。
朝夕の食事うまからずともほめて食ふべし。
元來客の身なれば好き嫌いは申されまじ。
今日の行くをおくり、子孫兄弟によく挨拶をして、娑婆の御暇(いとま)申すがよし。
穏やかな気持ちで倹約し、蓄えをすることだ。
倹約とは、不自由であることを我慢することである。
自分はこの世に来た客だと思えば辛いこともない。
食べ物がまずくても褒めて食え。客なんだから好き嫌いを言うな。
過ぎ行く一日を大切にし、身内の者たちに感謝の挨拶をして、
この世に別れを告げるのがよい。
(伊達政宗)