おれね、もう(自分が)暗いことで人に迷惑をかけるの、やめようと思ったんだよ。
(中村文則)
聞いたんですよ。
『中村さんの作品って暗い人間出てくるじゃないですか。
ぼくはそれすごい自分、共感できる部分なんですけど、中村さん明るいじゃないですか。
なんでですか?』ってめっちゃアホな質問を酔うた勢いでしたときに、もうぼくの座右の銘になってるんですけど、
『あのね、おれね、もう暗いことで人に迷惑かけるのやめようと思ったんだよ』
って。
それね、極論で、ぼく翌日からちょっとだけ変わりましたもん。
暗いことで迷惑をかけることがあるっていう視野が生まれたんで、ぼくに。
本当の気遣いって、これなんやって思って。
嫌なことがいっぱいあって、色々なことを気にしてしまうから、
周りの情報やコミュニケーションを遮断して暗くなったはずなのに、
暗い状態で人に迷惑をかけてるんやったら、もう一回心を開こうって。この人、めちゃめちゃ強いなって思って。
暗いと言われて許されてる状態に依存してるというのは、ちょっとダメなんじゃないかなって。
俺が暗いことで、みんなが代わりに頑張ってくれてることがあるよなって思ったら、
自分もやってみようと思って、そういう風に考え始めた。意識して明るめに振舞ったつもりのテレビを、後で自分で観て愕然とする。
自分が出てきたら、テレビのボリューム上げますからね。声、聞こえへん。
(又吉直樹)