まず、こういう問いの立て方はすごく良くないんじゃないかなと。
わかるわけないってところからスタートするのが重要かなと思うんですよ。「日本経済だけがなんで成長できないのか」みたいな問いを立てると、
じゃあなんかこういうことやらなかったから成長できなかったとか、
こういうことやったらもっと成長できたんじゃないかみたいなことを言いたいわけじゃないですか。
だけど、もし日本経済が今と違うことを、過去20年間30年間で違うことをやってたら
どうなったのかっていうことを考えると・・・まぁわかんないですよね。
だって日本って一個しかないわけじゃないですか。日本はたまたまこういうことをやって、こう歴史を積み重ねてきたので、
別の政権が生まれたらとか、まったく別の政策を取ったら、あるいは世界の趨勢が
変わっていたらどうなったいたかっていうのは、究極的にはまずわからないと思うんですよ。
だから、経済学者なのにって言われたんですけど、経済学者だからこそ
「わからない」っていうところから出発することが大事かなと思うんですよ。で、世の中には経済学者とかエコノミストとかっていう名前で、新聞とかテレビとかに出て、
たとえば日銀がお金を刷らなかったことが失われた30年の原因だとか言って
刷りまくればすべて解決みたいなことを言っている人たちがいるじゃないですか。あれは全員ただのバカか、あるいはポジショントークでギャラとフォロワーを手に入れたい
悪質な人たちということで、これを見てらっしゃる方は、そういうはっきりした主張をしてる
経済学者と称する人たちがいたら、ぜひ信じないで、すぐにフォローをやめていただきたい。
わからないことについてわかるって言っているのは、コロナがただの風邪だって言ってる人とか、
コロナで世界が崩壊するとか、ビルゲイツの陰謀だとか言ってる人たちとほとんど同じような感じなので、
テレビの人たちがそういう人たちを使いたがって、そういう人たちを使うと数字が取れるのはわかるんですよ。
だけど良識ある方はぜひ、信じないでいただきたい。ということで、まず世の中の難しさにちゃんと直面するということが重要なんじゃないかなと。
打ち出の小槌みたいなものはそうそう簡単にない。
(成田悠輔)