オーディションに受かって、プロデューサーからは「ロックバンドでデビューさせてやる」って言われてたから、
自分のロッカーとしての道が開けた…と思って飛びついたんですけど、フタを開けてみたら、
ロックはロックでもデジタル系のポップ路線で…。
まさか鼻ピにチェーンつけてたような男に『もっと強く抱きしめたなら』みたいな
爽やかな曲を歌わせるなんて思ってもみなかったから(苦笑)だから「話が違うだろ」って気持ちはWANDSの最初からあった。
あの“アイドル時代”を振り返ると「自分がやりたいのはコレじゃなかったのに」って気持ちがやっぱり強い。
(ぶっちゃけ、WANDSにいて良かったと思えることってあるんですか?)
それはありますよ。WANDSで僕を知ってくれた人が圧倒的に多いし、
WANDSから入っていまだに僕の歌を聴きに来てくれる方々がいるというのは大きいですよ。あとは、警察に職質されても「WANDSやってました」って言うと、割とすぐに僕のことをわかって
解放してくれることとか(笑)
でも、マイナス面もすごく大きいかな。
WANDSから抜けて、もう20年経ってるけど、それでも猫騙で全国ツアー回っても
いまだに"J-POPのWANDSの人"って見られ方をすることが多いし、対バンなんかしても
いまだに「中山美穂とコラボして売れたやつだろ」ってバカにされて笑われたりすることもあるから。al.ni.coでも猫騙でもソロでも、WANDS時代のイメージをブッ壊すつもりでやってきてるんですけど、
今でもWANDSとして見られているのは結構ショックかな。
(それだけWANDS時代のインパクトが大きかったということですよね)
メディアの力の恐ろしさだね。WANDSにいたのなんて、ほんの4、5年だけ。
でも、今、根気強く何年も何年も全国でライブするよりも、
あの頃テレビで歌った3分間のほうが影響力強いんですから。
人間って最初に見たものを"本物"と思いがちなんですよ。
だから、全然、僕の本質とは違う見られ方をしていたWANDS時代でも、
世間の多くの人にとっては、いまだにそれが上杉昇の"本物"になっている。そのイメージを払拭するのは本当に難しいなって思います。
(上杉昇)