大いなる加害者

一番許せないことはねぇ、人を許さないってことですよ、僕が。

つまり、被害者と加害者の論理で言うと、人間ってみんな被害者意識になるんですよ。
だけど、「大いなる加害者であれ」というものを読んだことがあるんですね。
その考え方って、僕はある種、腑に落ちた時期があってですね。

自分が被害者であっても蹴飛ばして、「ふざけんな」ってドアを叩いて出ていく時の自分って、
たぶん後ろで音楽が鳴っているかのように、勇ましくあり続けることができると思っていますね。

ところが被害者の中にこうやって塞ぎ込んでしまうと、もう死んでしまうしかないっていうようなもんですね。
で、誰かの力を借りて「何とかしてよ」という、情けない自分になってしまう。

だから僕は、20代から30代、あるいは40代で桜島のオールナイトで決死の覚悟でステージ立つまでは、
今おっしゃった質問でいうと、人を許さなかったんです。
で、自分が正しいと常に思ってきました。

確かに、そうやって行動もとってきたんです。
確かに、人に対して益ももたらしたと思っています。

だけど、ほんの些細なことでも、自分の正当性や自分の正義といったものをあまりにも信じて、
人を許すことができなかった。
例えば、肉体的な言語になったり、高圧的な言葉になったりといったことがありましたね。

それを今思うと、そういう自分があまり好きじゃないです。
たから、一番自分を嫌いなところは、人を許さないことでした。

長渕剛