最終的に育休を取ることを決意した一番大きな理由は、
「このままじゃ奥さんにフラれる」と思ったことなんだけどね。
というのも、四女が生まれるころ…つまり僕が30代半ばくらいのときには、
僕と奥さんは「親」としてのバージョンに圧倒的な差が生まれてしまっていて。女性は子どもが産まれるとOSのバージョンがガラッと変わるんです。
それまで「恋人」だった奥さんが、一気に「ママ」にバージョンアップされていくわけ。でも、俺は出産という決定的な出来事を体験してないから、
ずっと「恋人」からバージョンが変わってないんですよ。だから奥さんの急激な変化にめちゃくちゃ戸惑ったし、
奥さんは逆に、俺の変わらなさにイライラしてたと思う。
端末のOSが変わったら、当然アプリもOSに対応できるかたちに
バージョンアップしないと使えなくなっちゃうでしょ?それと同じことが夫婦でも起こるの。
バージョンがズレたまま無理に互いを機能させようとして、クラッシュしちゃう。結婚当初とずっと同じバージョンでいつづけた俺というアプリは、
子どもを産むたびにバージョンアップしていく奥さんのOSに
対応できなくなっちゃったんです。
だから、僕にとって育休は、
自分をアップデートさせて「父親」としてのバージョンを
奥さんに追い付かせるための“家庭訓練”の期間だったんです。「イクメン」なんかじゃ、決してない。
「このままじゃヤバイ」と一生懸命背伸びをしようとしていただけの
「ただの父親」だったし、今もまったく同じ気持ちだから。
何より、家のなかに「本当の理解者」がいると、それだけで家庭って
ものすごく円満になるんです。今日やったことの大変さを心の底から理解してもらえたり、
いざというときに手伝ってくれる人がいるだけで、
家庭の雰囲気ってホントに変わる。
もっといえば、「育児休暇」っていうけど、育児なんていったんどうでもいいのよ。
お父さんとお母さんがちゃんとした関係を築けていれば、育児はどうとでもなるんだから。まずは、両親のバージョンをきちんと一緒に上げていくことが、何より大事。
うちだって、どんだけ奥さんと話し合って、喧嘩して、ぶつかりあって
今の関係を築きあげてきたことか。
いきなり「イクメン」な男なんて存在しないのよ。
「親」になることすら難しいんだから。
(つるの剛士)