お前はいまだに、人生に期待しちゃってるんだよ

お前、この前の女の子に電話したか?新宿で一緒に飲んだ子だよ。
なんだっけ、ショートカットの・・・お父さんがイッセー尾形に似てるって言ってた・・・

(アケミちゃん?)

そう、アケミちゃん。電話したか?

(してないよ)

なんでしてないんだよ。

(だって携帯の番号聞いてないもん)

なんで聞いてないんだよ。
お前気に入ってたじゃないか、いい子だなって。

(いやぁ、なんかタイミングがなくてさ)

タイミングなんてないよ。
お前が作るんだよ、タイミングを。

いいかお前、電話番号をなめんなよ。
あの11桁の数字を知ってるか知ってないかだけが、赤の他人とそうじゃない人を分けてるんだからな?

お前は「タイミングがない」っていう理由だけで、すべての可能性を捨てちゃったんだからな?
もっと落ち込みなさいよ。

・・・ナンパ行くか。

(え?)

ナンパ。

(大学生じゃないんだからさ・・・)

大学生じゃないから行くんだよ。

(できるわけないだろ、いい歳して・・・)

じゃあお前はこれからどうやって女の子と知り合うんだ?

お前はいまだに、人生に期待しちゃってるんだよ。

これからもフツーに生活してれば、いつか誰かと出会うだろう。
ステキな女の子が現れるんじゃないかな。
まさかずーっと一人ってことはないだろうな、ってな。

漠然と。高校生みたいに。

(・・・) 

いいか?ハッキリ言っとくぞ。
30過ぎたら、もう運命の出会いとか、自然な出会いとか、
友達から始まって徐々に惹かれ合ってラブラブとか、一切ないからな。

もうクラス替えとか、文化祭とかないんだよ?
自分でなんとかしないと、ずーっと一人ぼっちだぞ?
絶対に。ずーっと。

危機感を持ちなさいよ、危機感を。

(神田勇介)