みんなが訳のわからないことをやってるという豊かさ

僕SFの例をよく出すんですけど、何回も何回もSF冬の時代っていうのがあるんですよ。
「SFなんてもう古い」とか言われてた時代が何回もある。

それでもSFがなんかずっと生き残ってるのって、まさにずーっとSFファンやり続けてる人達が
コミュニティ持ってるからなんですよね。

コミュニティ持ってると、冬の時代だっつって商業の方から結構冷遇されてても、
このコミュニティが母体となって、次世代の作家が育つわけですよ。

流行ってやっぱ移ろいやすいもので、ある時なにかすごいブームが来ても、みんなすぐに飽きちゃう。
でも、冬の時代でも耐えていけるような、ちっちゃい最低限のコミュニティを作ることが結局、
文化的な豊かさにつながるわけですよね。

だから、いろんなタイプのコミュニティがいっぱいある状態っていうのが喧騒ですね。

もちろん政治、投票に行くのも大事だし、ニュースを見るのも大事なんですが、
しかしやっぱり民主主義を支える基礎の基礎って、いろんな人が変なことを
やっていることなんですよ。で、それぞれ勝手なことを考えていること。

それがある時突然、まったく政治的じゃないと思われていたことが、
突然政治的な意味を持ったりするわけです。

だからそういう意味で、僕は日本は今のオタク国家のまま、みんなが訳のわからないことをやってるっていう、
この豊かさはずっと維持していくべきだと思いますね。

東浩紀