「あなたの一番のセールスポイントは何ですか」と問われれば、
僕は「自己嫌悪です」と答える。自分が駄目になっていることを自覚できない人間は駄目だと思っている。
僕はよく755で、若い人にこう言っていた。
「自己検証、自己嫌悪、自己否定。この三つがない人間には進歩がない」このうち一番易しいのは自己検証だ。
「今まで自分はこう思い込んでいたけれど、もしかしたらそれは思い違いだったかもしれない」
自分の思考や行動を客観的に検証し、修正していく。
これなら今日から誰にでもできる。僕は自己嫌悪を突き詰めるうちに自己否定まで自分を追い込む。
「文芸元年」と銘打った94年の幻冬舎立ち上げから20年以上が過ぎ、
「見城さんは十分、地位も名誉もあるのだから、そんなに自分を追い込まなくても
良いのではないか」と言う人もいる。冗談も休み休み言って欲しい。
現在に安住し、自己検証と自己嫌悪と自己否定を忘れるようなことがあれば、
もはや僕には生きている価値はない。「自分はまたしても駄目な人間になってしまった」と自覚するからこそ、
人は永遠に戦い、永遠に成長し続けられるのだ。