末期がん患者が語る、がんとの付き合い方

希望が入ると、予想が曇る。
投資も同じ、含み損の金融商品を持っている時、
「株価が戻ってくれれば、損しない形で売れる」と思い、
ずるずると持ってしまうことがある。

これは多分、がんと付き合う上では一番大事なことかなと思うんですけど、
自分がやりたいことってプライオリティがあるわけじゃないですか。
全部ができるわけではない。

たとえば自分の持ち時間がどれぐらいあるのかということは、なるべく正確に知りたい。
それと「治したい」「長く生きたい」ということは別の問題として、
できるだけ長くは生きたいんだけど、じゃあ自分が客観的な状況から見て
どれぐらい持ち時間を持ってて、どれぐらいの期間元気であるかってことを考えないといけない。

たとえば私の場合でいうと、順調に行けば娘が2年後に大学に入るわけだから、
娘が大学に入るところまではなんとしても生きたいとかって思って、
希望が予想に混じると、予想自体が曇りますよね。

確実に元気なのは半年、まぁ1年が平均だろう。
たとえば仕事としては、楽しみとしては、どんなものを持ってくるかっていうことを、
これは一方で予想に対して考えて、で、希望は希望としてなんか良い方法はないかしらと、
あるいはうまく行かないかなぁっていうようなことを、別々に考えるっていうことが大事。

ただこう時間をある程度区切ってみると、やりたいことってものすごくいっぱい
あるように見えるけれども、順序付けみたいなものができるようになるから。

もちろんガン以外に、がん患者だから心臓麻痺を起こさないとか、交通事故に
遭わないってことはないので、でも一応がんっていうターゲットが見えてくると、
自分の時間と、自分が何するか?ってことを割と考えやすくなるので、
病気そのものとしては付き合いにくいってことではない。

たとえば循環器系の病気なんかだと、不連続に意識がなくなっちゃったりってことがあるから、
がんの場合はそういうことは無いので、病気自体としては・・・

まぁなんか解決方法が見つかんないんで厄介だけれども、
でも付き合いにくいっていうことはない、っていう、そんなことですかね。

山崎元