怒ることの効用

その昔、まだ社会人なりたての頃、大の「ねぼすけ」だった私は、何度も遅刻をやらかしました。
仕事にも慣れ始め、体もバリバリ元気な頃ですから、夜な夜な遊び歩いていたものです。

その頃の上司だった方は、遅刻してきた私の顔を見るなり「ドアホウ!今日は倍仕事せぇ!」と怒鳴りました。
悪いのはもちろん私ですが、現代ですと字面だけでパワハラとも捉えかねられないのかもしれませんね。

でもその上司は、いつも「後腐れなく」怒る方でした。
一度ドカンと怒った後は、何事もなかったかのようにスッと日常の業務に戻られます。
その後の私とのコミュニケーションについても、もちろんいつもどおりでした。

後日、またやらかした時も「ドアホウ!今日は倍仕事せぇ!」調の言葉で怒鳴られたものですが、
怒るのはあくまでその日に起きたことに対してであって、「お前はこの前も・・・」といった
過去を引きずったような怒り方はしない方でした。
これは寝坊に限った話ではなく、部下の仕事上のあらゆる「やらかし」に対して、基本的には同じスタンスでした。

できそうでなかなかできないことだなと思います。
今になればその凄さがわかるし、懐の深さのようなものもあらためて感じます。
そして、そのマネジメント上の効用についても。

思い返せば、ドカンと後腐れなく怒られることで、かえって気まずさが吹き飛び、気持ちの整理が一気に済んだというか
そこから気持ちを切り替えて「よーし、この後で取り返すぞ!」と奮起するモードに突入できたものでした。
その方に対しては恩義しかなく、今でも忘れられない上司の一人です。

まぁ一気に禊が済んでしまったせいか、何度もやらかしてしまったのは私もだいぶ自分に甘かったと反省しますが、
若かりし頃の過ちということでどうか水に流してください(笑)

以上、現代でもそのまま使えるマネジメント術ではないかもしれませんが、アレンジすれば今でも通じる
人心掌握術のエッセンスが含まれている話かなと思ったので、書いてみました。

ちなみに、さすがにお名前までは出せませんがその上司の方は、その後も着実に成果を残され、
今は専務(誰もが知る一部上場企業です)にまで上り詰めています。