蛭子さんが遅く話す理由

戦闘思考力では、思考力に関してハイ・ミドル・ローという3つのギアを提案してる。

ハイギアっていうのは頭の回転が速い。
これはもう本当に人とやり取りする時は速くならざるを得ないし、途中でごちゃごちゃしてくるよりは、
もうとにかく一番最初に考えた結論でバッと押していきたいというのはそういうこと。
弁論大会とか議論に出てくる人とかテレビで出てくる人って頭の高速回転なんだ。

ところがさ、蛭子能収さんとかああいう人がテレビ出てくると、その場さらっちゃうでしょ。
あれは何かっていうと、ローギアが強いんだよね。

つまり、周りでどんな速い話をしてても、自分なりの回転速度で考えて、自分が「こうだ!」と思ったらそこに固執して、場の雰囲気を考えずに言うと。
これは頭の回転数を落としてるんだよね。

俺は蛭子さんと実際に話したことあるんだけど、実際に話すともうちょっとだけ、ほんのちょっとなんだけどテンポがいいんだよ。
「いやそんなことないよ」とか「あぁ、それだったら持ってっても良いよ」という風に、割と普通にパッパッパッと話せるんだけど、
テレビでは相手のペースに飲まれないようにするためだと思うんだけど、ほんのちょっとゆっくり話してる。

それがローギアってのをちゃんと持ってる人。

ミドルギアっていうのは、このハイとローとの間みたいなもので、「ゆっくり話して相手の話も聞きましょう」みたいな標準的な速度なんだ。

で、ものを考えるときに、僕らはついついハイギアの方ばっかり意識して、頭を速く速く回転させちゃうんだけど、そうじゃなくて、
速く回転させて相手にぱっと言い返すのではなく、ゆっくり回転させて、相手の言ってることを吟味して、全部を「わかった」と言う。
「わかんない」とか「えっそれ何で?」とか「じゃあ質問があるんですけど」とか「じゃあこれ抜けてると思うんですけど」とか
一切言わずに、全部「わかるわかる」でやると。これがローギア。

ミドルっていうのは、このハイとローの間に一つ付けといたら、自分の本来の思考速度ができるんだ。
自分の本来の思考速度をミドルで持ってると、ハイで上に上げる感覚と、ローで一段下に下げる感覚と、両方あってめちゃくちゃ使いやすくなるよ。

岡田斗司夫